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スマートファクトリーに適応した生成AIによる自由対話システムを開発

スマートファクトリーに適応した生成AIによる自由対話システムを開発

金沢工業大学(KIT)松井くにお研究室 様

2023年度

企画開発室では2023(令和5)年度、金沢工業大学(KIT)との共同研究で、生成AIとの自由な対話で製造現場の課題解決につなげるシステムの開発に取り組みました。世界を震撼させた対話型AI「ChatGPT」でも使用されているLLM(大規模言語モデル)技術を採用したもので、作業者がブラウザ上で入力した質問や命令に対し、生成AIが自然な対話形式で応答。その生成AIからの情報に従い、作業者はその場で迅速に課題を解決することができます。

開発を担当したのは、同大大学院工学研究科情報工学専攻の須山大輝さん(2年)です。
実装にあたっては、別川製作所の製造部門に向けた企業独自のマニュアル(全13ページ)のPDFデータを使用しました。PDF内の情報を数値化し、生成AIにそのデータを保持させます。作業者からの質問に対し、生成AIはその保持するデータの中から信ぴょう性の高い適切な「回答」を対話文に起こし、明示します。
システム構築のポイントとなったのは、LLMも含めて外部サービスを使用しないという点です。すべて自社内で構築するシステム(オンプレミス)にすることにより、企業の機密情報や独自技術が漏洩するリスクを防ぎます。それと同時に社内にある数多くの情報をとことんAIに学習させれば、活用の幅も大きく広がります。
実証実験では、マニュアルを必要とする実際の場面を想定した18の質問を生成AIに投げかけ、得られた回答に対して流暢性、正確性、十分性の観点で評価。結果、自然な文体で読みやすい流暢性は比較的高い傾向にありましたが、例えば作業者からの機器の運転回数についての質問に、AIは警報履歴に関する回答を誤って明示するなど、情報の正確性と十分性に改善の余地がみられました。
また、生成AIはマニュアルで多用される表や図を適切に分解できず、不十分な回答を明示することがあり、正答率を高めるにはPDF上の元データの設計に工夫が必要ということも分かりました。

現状このシステムは、KITのデータベースで稼働していますが、いずれは別川製作所に移管、もしくは共同でデータベースを保持する予定です。さらに同社が独自に構築検証するCreerプラットフォームに組み込み、スマートファクトリーへの適応を目指します。

金沢工業大学の松井教授と須山さんに
共同研究について振り返っていただきました。

共同研究に参加して、いかがでしたか。

須山さん 2年前に別のテーマで共同研究に参加し、その経験から積極的にアイデアを提案することができました。ChatGPTのニュースに衝撃を受け、文を生成する技術は人とロボットが協力する上で発生する課題の解決に役立てられるのではないかと思い、今回の共同研究に組み込みたいと企画開発室さんに提案しました。
松井教授 LLM(大規模言語モデル)は、この1年くらいで急激に成長した技術ですね。世界中の企業がその技術を何とかビジネスに取り込もうとしています。別川製作所さんが目指すスマートファクトリーにも応用できるのではないかと今回の採用にいたりました。

苦労したところを教えてください。

須山さん 環境を構築して、実際にシステムが動くように設計するのが大変でした。LLMがマニュアルの内容をなかなか読み込んでくれなかったり、セキュリティを重視して既存のLLMは使用せず、すべてオンプレミスでシステムを組み立てる必要があったりで…
松井教授 一般向けの汎用性が高く使いやすいLLMは、マニュアルのような専門領域に組み込むとどうしても用途に制限が出てしまいます。独自の具体的な言語モデルを持ち、適応させるのは大変ではありますが、対話や動作の自由度が高まるメリットもありますね。

次の段階の開発に向けて、どんなことを期待しますか。

須山さん 現状のシステムは一対一の対話には有効ですが、複数の回線から一度に質問や命令があると対応することができません。スマートファクトリーに適応するには、多方向から柔軟に対話できるようにする必要があると考えています。
松井教授 それと、今は文章で質問を投げかけていますが、将来的には音声認識による対話も目指していきたいですね。

PROFILE

松井 くにお教授

博士(工学) 金沢工業大学工学部情報工学科

須山 大輝さん

金沢工業大学大学院工学研究科情報工学専攻
博士前期課程2年

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