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スマホを活用したスマート検針サービス化の技術の開発

スマホを活用したスマート検針サービス化の技術の開発

金沢工業大学(KIT)坂本真仁研究室 様

2023年度

企画開発室では2023(令和5)年度、金沢工業大学(KIT)との共同研究で、スマホのカメラで撮影したアナログメーターの画像をサーバーにアップロードし、画像からメーターの識別と数値をデジタル化するスマート検針技術を開発しました。多くの製造現場では、目視によるメーターチェックと、紙に手書きやPC入力による記録保存が一般的ですが、このスマート検針技術を用いることで、作業者の手間を簡略化し、データの入力ミスを防ぐことができます。

研究には工学部情報工学科の坂本真仁講師のゼミ生である伊藤和希さん(4年)が携わりました。ポイントとなるのは機械の情報を組み込んだQRコードです。そのQRコードをメーター付近に貼付して、メーター本体と一緒に1枚の画像に収めて撮影・アップロードします。サーバー上ではAIがQRコードに記録された機械の情報とメーターの数値を画像から相互に分析。デジタル化したデータは、機械ごとに保存・データベース化することができ、過去のデータと比較して異常の予兆を検知することにも役立てられます。
画像からアナログメーターの数値を読み取る技術は、石川県工業試験場から技術移管を受けています。伊藤さんはQRコードとの相互分析の仕組みや、撮影からデータの読み込み、保存までの一連の作業をブラウザ上で行えるように開発しました。

1月には別川製作所の塗装工場で実証実験を行いました。機械の稼働を阻害せず、かつ高い精度で撮影するためのQRコードの最小サイズや1枚の画像に収めるためのQRコードとメーターとの距離間隔などを検証。さらに、目視と紙による記録とスマホ画像での読み取り・保存の時間を現場作業の中で比較したところ、紙は数秒、画像では数十秒かかりました。一見、紙の方が効果的に映りますが、データが即座にデジタル化され、個別のデータをとりまとめる後作業が必要ないことを考えると、検針全体においては画像の方が作業効率のアップが期待できます。
現時点ではKITのサーバーでデータ分析や保存を行っていますが、将来的に別川製作所が独自に構築検証するCreerプラットフォームでの展開も予定しています。

金沢工業大学の坂本講師と伊藤さんに
共同研究について振り返っていただきました。

共同研究に参加して、いかがでしたか。

伊藤さん 大学ではスマホが読み取りやすい平面上の位置にQRコードを貼って試していましたが、工場での実証実験ではメーターのそばに高温の配管が通っていて貼る場所が限られ、工夫が必要でした。でも実際の現場で技術が形になる経験ができ、よかったです。
坂本講師 実証実験は通信環境の課題を考えるきっかけにもなりました。回線が限られた工場があっても、一通り撮影した後に通信環境の良い場所に移動して画像をアップロードすれば解決できるといった話も出ました。

苦労したところを教えてください。

伊藤さん 石川県工業試験場さんの技術を別川製作所さんの個々のメーターに動作設定することです。メーターによって基準となる最大値や最小値が異なるため、機械を識別するファイル(コンフィグファイル)を一台ずつ手作業で設定し、QRコードに組み込みました。読み取り用と規定値を示す2本の針を備えた複雑なメーターは特に大変でした。
坂本講師 データを保存するフォーマットの構造も思案しましたね。メーターの数値だけでなく、メーター自体の情報や測定した日時も画像から読み取って保存できるようにしてはどうかと話し合い、実装を試みました。

今後、この技術に期待することは?

伊藤さん 現状、メーター1台に対してQRコードも1点必要なのですが、機械によっては1台のマシンに複数のメーターが付属しているものもあります。点検の際にそのすべてを一つひとつ撮影するのは時間も手間もかかるため、QRコード1点の撮影でその機械が所有する全てのメーターの情報を得られるといいなと思います。
坂本講師 現状のデータベースは、既に1枚の画像から複数のメーター情報が得られるよう拡張性を持たせた構造になっていますから、ぜひ実現したいですね。

PROFILE

坂本 真仁氏

講師 博士(工学)
金沢工業大学工学部情報工学科

伊藤 和希さん

金沢工業大学工学部情報工学科4年

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